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大阪地方裁判所 平成3年(わ)1760号 判決 1992年6月16日

本店所在地

大阪府高槻市北園町一六番二三号

株式会社フジワーク

右代表者代表取締役

白石俊廣

本籍

鹿児島県鹿児島市平川町一六七四番地

住居

大阪府高槻市南平台四丁目一二番八号

会社役員

白石俊廣

昭和七年一一月二二日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官宮下準二出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社フジワークを罰金三〇〇〇万円に、被告人白石俊廣を懲役一年六月に処する。

被告人白石俊廣に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社フジワーク(以下、「被告会社」という。)は、大阪府高槻市北園町一六番二三号に本店を置き、人材派遣業等を営むものであり、被告人白石俊廣(以下、「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、その法人税を免れようと企て、

第一  売上の一部を除外するなどの方法により所得の一部を秘匿して、被告会社の昭和六一年九月二一日から同六二年九月二〇日までの事業年度における実際の所得金額が別紙の(1)修正損益計算書のとおり二億二〇五〇万一二八九円でこれに対する法人税額が別紙の(3)税額計算書のとおり九〇三一万〇五〇〇円であるにもかかわらず、同年一一月二〇日、大阪府茨木市上中条一丁目九番二一号所在の所轄茨木税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が別紙の(1)修正損益計算書のとおり一億七〇五〇万五〇三九円で、これに対する法人税額が別紙の(3)税額計算書のとおり六九三一万二二〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により別紙の(3)税額計算書のとおり被告会社の右事業年度における正規の法人税額と申告税額との差額二〇九九万八三〇〇円を免れ

第二  第一と同様の方法により所得の一部を秘匿して、被告会社の昭和六三年九月二一日から平成元年九月二〇日までの事業年度における実際の所得金額が別紙の(2)修正損益計算書のとおり二億五〇二六万八二一三円でこれに対する法人税額が別紙の(4)税額計算書のとおり一億〇三〇六万九一〇〇円であるにもかかわらず、同年一一月二〇日前記茨木税務署において、同税務所長に対し、別紙の(2)修正損益計算書のとおりその所得金額がなく、これに対する法人税額もない旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により別紙の(4)税額計算書のとおり被告会社の右事業年度における正規の法人税額全額一億〇三〇六万九一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

注 カッコ内の算用数字は証拠等関係カード(検察官請求分)の当該請求番号の証拠を示す。

判示全事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書(41)

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(25・27ないし29・34)

一  井原昌彦の検察官に対する供述調書

一  中筋旦の検察官に対する供述調書(22)

一  大阪法務局登記官作成の法人登記簿謄本

一  検察事務官作成の報告書

判示第一の事実について

一  被告人の検察官に対する供述調書(43)

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(32・35・39)

一  大蔵事務官作成の証明書(3・6)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(1)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(7・20)

判示第二の事実について

一  被告人の検察官に対する供述調書(42)

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(26・31・33・36ないし38・40)

一  中筋旦の検察官に対する供述調書(23)

一  市来涼一の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の証明書(4)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(2)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(8ないし19)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

更に、被告人の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については法人税法一六四条一項により判示各罪につき同法一五九条一項所定の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用し、いずれも、その免れた法人税の額以下とし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により右各罪の罰金額を合算した金額の範囲内で被告会社を罰金三〇〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件は、人材派遣業を営む被告会社において業務全般を統括していた被告人が、昭和六二年九月期及び平元年九月期の二事業年度に合計四億七〇〇〇万円余りの所得をあげながら、売上の一部を除外するなどの方法により所得の一部を隠して申告し、二事業年度分合計一億二〇〇〇万円余りの法人税を脱税した事実である。その脱税額は多額であり、ほ脱率も、昭和六二年九月期分は約二三パーセント、平成元年九月期分に至っては一〇〇パーセントであって、二事業年度分を平均すると約六二パーセントという高率に達している。

その犯行の態様は、主として売上除外と寮費収入の除外であって、被告人がこれにより得た資金を定期預金等として留保していたものであって、その手口は巧妙でないとしても、相当に大胆である。特に、被告人には昭和五六年四月七日、本件と同種の法人税法違反により、懲役八月、三年間執行猶予の判決に処せられた前科があり、本件はその執行猶予期間が経過した後のものであるとはいえ、その後間もなく敢行されたものであり、被告人には脱税についての規範意識の程度が相当低いと言わざるをえない。また不況に備えての資金留保、将来の子会社設立資金の準備という犯行の動機も、納税を前提とした上で、合法的な経営努力によりなされなければならないのであり、動機として酌むべきものとはいえない。

しかし、他方、被告人は、査察段階から概ね事実関係を素直に認めて反省の態度を示していること、事件発覚後は経理部門の管理体制を強化し再び納税義務に違反しないための体制を整えていること、被告会社及び被告人において、本件ほ脱額に関し、既に本税、附帯税合計一億七五〇〇万円余り、地方税合計八四〇〇万円余りをすべて納付済みであることなど被告人らのために斟酌すべき事情も認められるので、これらの事情を総合考慮すれば、被告人らを主文の刑に処した上、懲役刑については、その執行を猶予するのが相当と考える。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 田中正人)

別紙の(1)

修正損益計算書

自 昭和61年9月21日

至 昭和62年9月20日

<省略>

別紙の(2)

修正損益計算書

自 昭和63年9月21日

至 平成元年9月20日

<省略>

別紙の(3)

税額計算書

自 昭和61年9月21日

至 昭和62年9月20日

<省略>

別紙の(4)

税額計算書

自 昭和63年9月21日

至 平成元年9月20日

<省略>

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